KS栽培

2016年から作り手がいなくなった、ポンカンの山をお借りして自然栽培(農薬・化学肥料不使用)にチャレンジしていました。山の急斜面を利用しての栽培や収穫などの作業は大変でしたが、水はけが良くて風味は最高!お客様にも喜んでいただいて、はじめは順調でしたが3年がたった頃から異変が…。

「お前のところからダニがくる」

2020年春、近隣のポンカン農家からそう言われ、急いで山に行くと葉っぱが大量に落ちていて、木は丸裸状態に!周囲の方に迷惑をかけられないと、それまで使用していなかった農薬を散布しました。それでも被害は止まることはありませんでした。

止まらない落葉

後で専門家に調査してもらうと「ダニはいたようだけど、原因はそれじゃないと思う」という診断結果が。ポンカンの産地であるこの地域全体で同様の被害は広がっていて、少し離れた慣行栽培(農薬・化学肥料使用した標準栽培)の園地では更にひどい状況の場所もあり、農薬だけで対処できるものではないと震えあがりました!

農業試験場が検体を採取して調べたところ、【炭疽病】のウイルスだけが検出されました。果皮の傷から病原菌が侵入することによって発生し、葉にも感染するやっかいな病害で、現在も被害は拡大し続けています。

苗木にも症状が出ています

収穫量激減!!

葉っぱが落ちると、木は自分を守る為に実も落とします。なので、その年(2020年)収穫量は半減、さらに翌2021年も被害は拡大し続けた為、例年比95%減で販売数宇ゼロ!という悲惨な状況でした。

今シーズンは、2020年の収穫量まで150%以上回復しましたが、それでも例年の半分以下という状況です。収穫した実も炭疽病の症状が出ていたり、傷なども多く20%は廃棄することになりました。樹勢が少しずつ回復してくれて、葉が多くなると収穫量も増えるのですがどうなるかは全く分かりません。

ポンカン収穫量乱高下!

KS栽培へ移行しています

自然栽培にチャレンジしていましたが、こういった栽培&経営危機に直面した為、2020年から有機栽培で使用できる農薬を散布しています。また、2022年には感染拡大し続ける“炭疽病”に対抗する為に1度だけ、慣行栽培でも使用される農薬を使用しています。(それでも症状は完全に止まることはありませんでしたが…)

マイホース購入

肥料は引き続き、有機質100%のものや天然成分だけで作られた液体肥料をこだわって使用しています。「絶対に農薬は使用しちゃいかん!」ということではなく、温暖化で異常気象が当たり前になった現在の環境に合わせて、必要なものを無理なく、なるべく環境と経営にインパクトを与えないように選択し使用していきたいと思っています。

こだわりの有機肥料

『KS栽培』と書いていますが、これは上記のような経験・体験をした私が考え、選択した栽培方法です。「Koji Sakamoto栽培」とも言えるかもしれませんね。これからも状況に合わせて変化し続けていきますし、それを皆さまにオープンにしていくことで、安心して召し上がっていただけると信じています。

追記①:ポンカンと合わせて小夏の自然栽培もKS栽培に切り替えています。レモンは皮まで使いたいお客様が多いので、引き続き一切農薬を使用せず自然栽培のままです。

追記②KS栽培と慣行栽培との一番の違いは収穫前に散布する防腐剤の有無です。貯蔵し追熟するミカンは腐るのを予防する為に防腐剤を使用しますが、KS栽培では一切使用しておりません。その為、我が家ではポランジェット作りにはこちらのポンカンを使用しています。

防腐剤不使用だから皮まで安心