果樹園さかもとの人気商品、農薬・化学肥料を使用せずに栽培している“ぽんかん”ですが、今年は販売できそうにありません。毎年、ファンになってくださる方が増えてきて、今年も楽しみにしていただいていたのに残念で仕方がありません…。私の勉強や力不足はもちろんなのですが、厳しくなりすぎている自然環境も大きな原因の1つです。「どうするか?」を一緒に考えていただけると助かります。
不調のはじまり
今年の4月、隣接する山の持ち主から「ぽんかんの木が枯れとるぞー」と、連絡をもらいました。2月から3月中旬にかけては、葉も充実し花も咲き始めて順調に育っていた為、軽い気持ちで山へ様子を見に行ってみると、そこにはすでに大部分の葉が落ちてしまい、見るも無残な姿の木が沢山…。その場で倒れこんでしまいそうになるくらい、大きなショックを受けてしまう光景でした。
「ダニだ、ダニ!」 「お前のところからダニがくる」
という非難の言葉もあり、さらに精神的に追い打ちをかけられる日々。県の研究機関に調査を依頼すると、『ダニがいた痕跡もあるが、ダニだけではこんな症状にはならない。他の影響が考えられる』とのこと。少し安心(?)することができましたが、だからといって樹勢が急に回復するわけではなく、枯れ木の山に変わりはありません。
また、果樹園さかもとがある地域は、ぽんかんの産地なのですが一帯で同じような症状が多発し、木が枯れてしまう農園もあることが分かりました。数キロ離れた文旦の産地や高知県北部の山などでも、同じような症状が発生したという報告を聞いたのは、夏前ころでした。
原因は何?
現在でもコレ!といった原因は明確になっていません。検体を調べてもらい、出てきた有力な原因は、
【炭そ病】です。
それ以外の病原菌は検出されず、その炭そ病でさえも通常使用している農薬で防除できるものです。自然栽培の園地だけでなく、かなり広範囲に広がっている(遠く奈良県の柿もそれで落果している)ことから、炭そ病だけが原因でもなさそうです。他に考えられるものとしては、昨年秋の極度の乾燥、今年の1月に数日続いた最低気温マイナス5℃の大寒波、春の冷たい雨、夏の高温と8月1カ月間の長雨…。羅列してみると、1つでも不作の大きな原因になりそうな程の過酷な自然環境が折り重なって襲ってきたのだから、無事で済むはずがないことを痛感します。
今後の対応について
農薬や化学肥料を使用せず、新たな栽培方法を模索して新たな価値を創造してきましたが、老木が多い園地では今回の症状の進行が止まらないこと、周囲の農家からの厳しい声などもあり、今シーズン途中から農薬を使用しています。なるべく、自然への負荷を少なくし、作業者の安全も確保する為に、≪有機栽培に使用できる農薬≫を選択・使用しています。
近くの農協に相談できる方もいて、メーカーに問い合わせてもらい、迅速に対応することができました。幸いなことに、現在では樹勢もゆっくりとではありますが回復しつつあり、翌年以降の生育にも期待が持てはじめています。
樹齢60年を超える古い木が多く、現在の超高温・多雨に加えて、たまの大寒波という過酷な環境下では、自然栽培が困難であることが分かりました。来シーズンも引き続き、≪有機栽培の基準≫を参考に農薬を使用していきます。そして、毎年定植している苗木が大きくなり園地全体で木の更新が進み、私がさらに精進して知識と経験を積んだときに、再度自然栽培へのチャレンジを試みようと思っています。
どんなものを口にしたいでしょうか?
高知県北部の産地では、さらに低いマイナス9℃を下回る最低気温を記録し、温州みかんの木が枯れてしまったそうです。また、土佐文旦の産地では花が咲かず、収穫量が9割減だとか…。このように、露地栽培で食べものを栽培することは非常に困難な状況です。このまま温暖化が進み、自然環境の過酷さが増すと、栽培に適した環境がなくなり、果物は超高級品化するかもしれません。農薬や化学肥料をさらに使用して、増える病害虫と戦う必要も出るかもしれません。
私は、なるべく自然に近い環境で、安心して口にいれてもらえる、手の届きやすいお値段の果物を栽培・お届けしたいと思っています。皆さんは、どんなものを食べたいですか?一緒に考えていきましょう。